耳鳴りがする。かちかちと鋭く合わさる金属音のような、母を求める幼子のような音が。
耳をふさごうと上げた腕は動こうとしない。
おれはきっとこのまま死んでいくのだろう。
朧気になっていく意識のなか、己の最期を感じた。




耳鳴りがする。周りの音は既に何一つ聞こえないというのにひどくうるさい。
ふと、誰かに名を呼ばれた気がした。
微かな、微かな、消え入りそうな声で。それでも確かに聞こえた。
霞む意識のなか聞いたそれはきっと己の生み出した幻聴だったのであろうけど、との、
あなたのこえが、

(冷たくやわらかな声)