汝が死ぬ夢を見たよ。夢は深層心理の表れだというが、ああ、妙な顔をするな。
そのような事望んではおらぬよ。まあそんな事はどうでもよい。
兎に角、汝が死ぬ夢を見た。否、死んだ汝の夢を見た、と言った方が正しいか。
なにもない、只只白い処でな、血の一滴溢す事無く汝が死んでいた。
恨みがましいでもなく、かと言って別段穏やかでもない何時もと何ら変わらぬ顔のまま。
そう、その眉間の皺もそのままで、だ。
汝は確かに死んでいた。然しな、可笑しなことに、まあ夢に可笑しいもなにもないか。
そう、汝の口が開いてな、ああ、決して生き返ったなどという訳ではなく、
死んだ、死んだ汝が口を開け呟いたのだ。何を?ああ、其処なのだ。
我も思い出そうとしているが、全く思い出せぬ。話している間に思い出すかと思ったのだがなあ。
さて、そろそろ話すのにも飽いた。然し此処は只只暗く、赤いな。
さあ、目を醒ませ、次は汝の番だ。
先程何と呟いたのか話してはくれぬか?

(ゆめのまたゆめ)