「殿はまるで猫のようですね」

「猫?おれを猫などと言うのはお前がはじめてだ、さこん。人はおれを狐と呼ぶ」
「気まぐれで、我儘で、なんて猫そっくりじゃあないですか」
「お前はおれを馬鹿にしているのか」
「いえいえ、滅相もない」
「おれが猫だというならさこん、お前は一体何だと言うのだ」
「さこんは、さこんは人です」
「おれは猫なのに?」
「はい、殿とさこんは違います」
「そうか」



「との」
「何だ」
「さこんは人が嫌いなのです」
「ああ」

「さこんは猫が好きなのです」
「ああ」
「おれは」
「おれは猫は嫌いだよ」