転。
夢を見ているのか、それとも現つであるのか。否、現つである筈がない。
つい先程断ち切ったではないか。
ああ夢を見ている。非道く不気味な、まるで現つの様な…


まる。
赤い赤い、血の色、糸、糸?
否、もっと怖ましい…
足下に広がった血溜りからぞろぞろと這い上がる。
肉を締め上げるそれが膝を過ぎ、胸を通り、喉元に達したところで気付く。髪だ。赤い赤い、血の色の、
髪。では一体誰の?


識。
誰の、ああ、決まっているではないか。
知っている。この赤を。この目眩を覚えるような、血の薫るような赤を。
知っている。ああ、覚えているよ、忘れるものか。


う。
笑う。首が笑う。足元の血溜りの中でわらう。
髪は絡まり喉元を締め上げる。
夢を見ているのか。それとも現つであるのか。
つい先程断ち切ったではないか。
笑う。血溜りでそれが笑う。
夢を見ているのか。
ああ、夢を見ている。非道く不気味な、まるで現つのような…

(甘やかな地獄)